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バイク/パーツのインプレッション

バイクやパーツを実際に使用してみた感想を記載します。

スズキ DR-Z400S '00

DRZ

[当時の業界背景と発売まで]

1990年代。当時のトレールバイク界は、2ストロークエンジンから4ストロークエンジンへの過渡期にありました。

2ストロークエンジンは高性能で軽量な一方、排ガスや燃費に問題があり、社会の求める環境性能はクリアできません。

2ストは高性能でコースまで走れる、4ストはまったり系という市場評価の中で、各メーカーは様々な角度から答えを探していました。

カワサキ-KLX250SRのように4ストに高性能イメージを持たせようとしたり、ホンダ-CRM250ARのようにクリーンな2ストを作ろうとしたり。


スズキは2ストのRMX250Sが過激な高性能車として人気を博す一方、4ストのDR250S/Rは他社に比べ特に良い所が無く、全然売れていませんでした。

排ガス規制でRMX250Sの生産終了は見えていましたから、後継となる高性能トレール車の開発が必要でした。


この時、海外で人気を博していたスズキのエンデューロモデルがあります。DR350です。

ホンダから引き抜いたアルベイカー氏の開発によるもので、4スト349ccの空冷エンジンを搭載していました。

このクラスはホンダのXR350、ヤマハのTT350などもあり、カテゴリとして成立していました。

4ストトレールとして性能を求めるならこのあたりの排気量…という思いもあったのではないでしょうか。


想像ですが、当時の企画部門の考えとしては以下のようなところでしょうか。

・4スト250ccでは性能を求めるユーザに訴求できない。DR350のアプローチで真のRMX250Sの後継を!

・4スト250クラスではすでに他社の後塵を拝している。他社と同じ事をするのではなく、思い切った構想が必要。

・モタード(当時スーパーバイカーズ)の需要増が見えており、流用が容易。将来的に派生車種を出せるので、コケた時の投資回収にも!


ともあれ無事に企画は通ったらしく、2000年4月、新開発の軽量な水冷398ccエンジンを積んだ車両をリリースしました。

これがDR-Z400S(公道用トレール車)およびDR-Z400(エンデューロ競技専用車)です。


新開発の水冷398ccエンジンは鍛造ピストンで40ps/トルク4.0kgmを発揮し、エンジンカバー類へのマグネシウム合金使用、アルミ製シートレールなど乾燥重量を129kgまで絞っています。

前後サスペンションもSHOWA製のフルアジャスタブルです。モトクロッサーRMのものを専用チューンしています。

インナーチューブ49φのフロントフォークは公道用市販車で前例が無いもので、リヤショックユニットはインナーロッド16mmのごついやつです。

スズキさん、コストかけすぎです(笑)。乗っている私としてはとても有難いのですが、本当にこの投資が回収できると思ったのでしょうか。(笑)

今の時代では絶対に出せないでしょうね。

そうそう、エンデューロレーサーと同時開発というのも昔は当たり前だったのですが、おそらくこのDR-Z400Sがトレールバイク界で最後です。


[発売後]

さてさて、そんなDR-Z400Sは発売後どうなったかというと、日本国内ではレアバイク道を突き進みます(笑)

高い車両価格、日本人には高すぎるシート高、車検がある、400ccのパワーは扱いきれない、やはり250よりは重いなどの後ろ向きな思いがあったのでしょう。

その後、2004年にモタード仕様のDR-Z400SMが発売され、こちらは国内でもヒットしました。

日本国内仕様車は、排ガス規制を理由に2008年販売終了となりました。Sの最終モデルの希望小売価格は69万円でした。

中古市場でSは値上がりを続けています。SMはかなりのタマがありますが、Sは全国に数台のレベルです。最終型に近い綺麗なSは50万円以上します。

ちなみに北米、カナダ、オーストラリア等ではSもSMも2017年モデルが出ていますので、実は海外では新車で買えます。

パーツも海外の方が圧倒的に豊富です。


[エンジン]

DRZ DRZ

K419型 水冷4ストローク単気筒 DOHC 4バルブ(吸気2、排気2)

ボアxストローク : 90.0 x 62.6

圧縮比:11.3

最高出力:40ps / 7,500rpm

最大トルク:4.0kgfm / 6,500rpm

ピストン:鍛造製

1stリング:L型

2ndリング:テーパーフェース

シリンダ:SCEM(Suzuki Composite Electrochemical Material)

バルブ径:IN. 36mm、EX. 29mm

バルブ挟み角:IN.&EX. 14°

カムリフト:IN. 8.5mm、EX. 29mm

潤滑方式:ドライサンプ


[車体]

フレーム形状:セミダブルクレードル

乾燥重量 : 129kg

装備重量 : 140kg

最低地上高 : 0.300m

ハンドル切れ角:45°


[フロントサスペンション]

DRZ

SHOWA製正立カートリッジフォーク

伸側圧側減衰力調整

インナーチューブ径 : 49mm

ストローク : 288mm

フォークオイル : SHOWA SS-05 717mL


[リヤサスペンション]

DRZ

SHOWA製ピギーバックガスタンク付

伸側圧側減衰力調整、スプリングイニシャル調整

リヤホイールトラベル : 295mm


[フロントブレーキ]

DRZ

NISSIN製 油圧式シングルディスク

ディスク外径 : 250mm

キャリパピストン : フローティング 27mm×2


[リヤブレーキ]

DRZ

NISSIN製 油圧式シングルディスク

ディスク外径 : 220mm

キャリパピストン : フローティング 27mm×1


[乗ってみてどうなの?]

まず車体は大きく、250ccより肉厚な感じで、ホイールベースも長いです。

フレームのがっちり感がすごく良く、変によれることもありません。

エンジンは低速トルクも良く出ており、吹け上がりが軽くかったるさもありません。始動性も良好です。

サスペンションも僕にはもったいないくらいで、何の不満もありません。デフォルトセッティングでは少し固かったので、伸び、圧ともに少しソフト目にしています。

林道では1つ上のギアでもコーナーを回っていけます。ただしトルクが強い分、不用意なスロットル操作をすると簡単にリヤタイヤの空転がおきます。

エンブレも強いので、下りのコーナー手前はよく意識が必要です。

舗装路上ではパワフルでとても楽です。高速道路の100km巡航もとても楽になりました。

250ccからのステップアップに最適だと思います。ただし250よりでかくて重いので、体格がよくない人は一度跨ってみてください。


[DR-Z400Sあるある]

・SMが売れたおかげで、ヤフオクで中古パーツが安く豊富。

・SMが売れたおかげで、新品アフターパーツも豊富。

・SMが売れたおかげで、ネット上にノウハウ多数。

・SMが売れたおかげで、安価にモタード化も可能。

・オフ車乗り以外はこのバイクの存在を知らない。しかしオフ車乗りには意外と有名。DR-ZのSだ!レア!みたいな反応をされる。

・知らない250オフ乗りと話しても話題に事欠かない。400ってどうですか?やっぱ重いですか?あたりは皆さん気になる模様。

・リヤタイヤの選択肢が意外と少ない。120/90じゃなくて120/80にしてくれたら良かったのに…。(入るけど尻下がりになるので嫌)

・車検が憂鬱。主にヘッドライトの光量。

・フォークが太いので社外のフォークブーツが使えない。

・チェーンのリンク数が110ピッタリなので買ったまま交換できる。


[Q&A]

Q:電装系弱いの?

A:確かに日本車としては少し弱いかもしれません。4万km走行でレギュレータとジェネレータをそれぞれ1回交換しました。

 経験上、後付のUSB充電端子とかが注意です。古くなったジェネレーターに負荷がかかるとアース短絡しやすいですね。

Q:アウトプットシャフト(Fスプロケットのところ)折れるの?

A:SMの事例は聞きます、Sではあまり聞かないですが、タマ少ないですからどうなんでしょうw

 確かに、軽量化の為にかなり肉抜きされていますからね…。

 サーキット使用などで激しいエンブレの時に起きやすいようです。

 機械工学の研究者の方にご意見を伺う機会があり、あの折れ方は、Fスプロケットが正しく固定されている状態では考えにくいそうです。

 (正しく固定されていてエンブレ時のバックトルク等で折れるなら、スプロケットが噛んでいる位置から折れるはず。)

 下にも書いてありますが、スプロケットナットの緩みが根本原因なのでは?と思っています。

 ナットが緩んでFスプロケットが暴れる状態になり、エンジン側にはカラーがあるため動けないので、強いエンブレ時などにナットに大きな力がかかり、折れる。(想像です!)

 よって定期的なチェックは欠かせません。

 ちなみに、問題のシャフトはいま注文すると部品番号変更になっており、肉厚になっています。

Q:Fスプロケットの固定ナット緩むの?

A:緩んでいた経験があります。ナットと緩み止めワッシャだけ新品にしたらその後緩まなくなりました。

 スプロケット交換時には、ナットとワッシャを新品にしましょう。

Q:一番効いたパーツは?

A:2つ挙げます。レオビンチX3マフラーとスカイリッチのリチウムイオンバッテリーです。

マフラーは中回転以上のトルク感が全く違います。リチウムイオンバッテリーは2kgも軽量化するので、引き起こすときに良く分かります。

Q:こけたときのダメージは?

A:普通のオフ車です。金属製のハンドカード着けていれば、各所傷つくだけで、走行に問題がある事は何も起きません。

 クラッチカバーとジェネレーターカバーはマグネシウム製なので、アルミのカードを貼り付けておいたほうが良いでしょう。

 当たり方が悪いと、ブレーキペダルやシフトレバーが突き刺さる事があるようです。

Q:400ccエンジンどう?

A:舗装路では楽です。ダートではトルクが強いので、250より気を使う場面もあります。

 ただし、そんなに気難しいことは無く、総じて扱いやすいので臆する事はありません。

Q:お気に入りポイントは?

A:色々ありますが、フロントフォークは見ていても楽しいですねwやたら太いのでw

Q:オイル減るの?

A:4万km以上走っていますが、目に見えるほど減ったことは無いです。ドライサンプなので、量を点検するにも正しい手順が必要です。

 減ると言っているサイトもたまに見ますが、正しい手順でやっているようには思えないのです。

 手順はこちらで紹介しています。


[お勧めの使い方]

・高速道路を含めた林道ツーリング

・公道含めたラリーイベント。※クローズドコースではレーサー乗ったほうが絶対に良いです


[不満]

・ヘッドライトが暗い。→対策済み

・ニュートラルでもクラッチを握らないとセルが回らない(スズキ車全体)。

・ドライサンプなのでオイル交換が面倒。


[一般的な定期メンテ以外にやっておいたほうがよい事]

定期的なフロントスプロケットナットの緩み点検。オイル交換の都度くらいのタイミングで見ておきましょう。

シフトリターンスプリングの交換。3万km毎くらいで変えたほうが良いと思います。

レギュレータ、ジェネレータ。3万km毎くらいで変えたほうが良いと思います。お勧めは電圧計つけて監視です。

バッテリ上のカプラ磨きと防水。やがて充電不良を起こすので、特にダート走る人はやっておいたほうが良いと思います。


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