スイングアームピボットベアリングのグリスアップ
・DR-Z400Sのスイングアームピボットベアリンググリスアップ
DR-Z400Sのスイングアームピボットベアリングをグリスアップします。
一般的なバイクのスイングアームは、フレームを軸にしてもう一方の端にリヤホイールが付いており、
リヤホイールが地面との衝撃やエンジン駆動力の影響を受けた際に、上下に可動できるようになっています。
リヤショックアブソーバーやリンクと接続され、共にリヤのサスペンション機構を構成しています。
この軸(ピボット)となる部分にはベアリングがあり、グリス切れを起こすとスムーズな動作ができません。
定期的にメンテナンスすることにより、動作をスムーズにし、寿命を延ばす事ができます。
今回はグリス切れは起こしていませんが、定期的なメンテナンスとして行います。
ところが、このスイングアームの根元にあるピボットシャフトは、長期間放置すると錆びて固着することで有名です。
Googleで検索すればいくらでも出てきます。太く長いシャフトなので、固着すると抜くのが一苦労なのです。
例に漏れず私のDR-Zも固着していました。太いボルトをあてがって普通のハンマーで叩いて見ましたが、ビクともしません。
中空シャフトなので、反対側にM12のタップを立て、座金を当ててボルトを締めることにより引っ張る作戦に出ましたが、
下穴が若干広かったようで、大トルクを掛けると空転してしまいました。失敗です。
鋼なので、これにハンドタップでM14は不可能でしょう。
さて、叩く作戦に戻ります。直接シャフトを叩くのが最も効率が良いのですが、ご覧のとおり引っ込んでいるので叩けません。
こういう場合、高ナットを使えば良いと考えると思います。しかし、ピボットシャフトのネジ部はM16ですが、ピッチが細目(1.5)なのです。
ホームセンターで売っている並目(2.0)とは違います。M16の細目の高ナットなどというニッチなものは、探した限り見つかりませんでした。
細目ピッチは、車やバイクに良く使われています。
思考を巡らせ、車ででかいナットで容易に入手できるもの→ホイールナットがある→でも乗用車のはM12とかだろう→そうだトラックがある
という考えで調べたところ、見事にありました。
トラック用のインナーナット「BON IN-5102」です。内側がM16のP1.5です。Monotaroで\289でした。
トラックのホイールナットは車体左側が逆ネジです。なので必ず"右用"を買ってください。
ねじ山がバカになるといけないので、ウレアグリスを塗ってから数回転締めこみます。
ピッタリです。
さて、あとは叩くだけですが、最初は1ポンドのショックレスハンマーで叩いていましたが全然ダメで、ハンマーが壊れそうな勢いです。
そこで用意したのがビバホームの石頭ハンマー 1.3kg(\1,080)です。
このハンマーを両手で持ち、渾身の力で2,3回叩き込んだところ、抜けてきました。
これからやる方は、最初から重い石頭ハンマーを用意したほうが良いです。軽いハンマーでは絶対に無理です。
抜けたピボットシャフトです。錆びています…。
エンジンブロック部から車体左側にかけてがアウトですね。
スイングアームを外すには、リヤサスリンクの結合部も外しましょう。
陰になっていて見えにくいので、取り付け忘れにも注意です。
スイングアームが外れました。今やトレールでも当たり前になっていますが、アルミ製は軽いです。
外したベアリングカラーです。ベアリング側は綺麗ですね。下のカラーの点々としたものはサビではなく埃です。
ベアリング側にもグリスが残っています。前のオーナーも一度はメンテしてそうです。
パーツクリーナーで古いグリスを綺麗に洗い流します。ベアリングも綺麗なもんです。
AZのウレアグリスをこれでもかというほど詰め込みます。
表面に塗るのではなく、ベアリングに押し付けるようなイメージでひたすら詰め込んでいきます。
固着しているのは知っていたので、ピボットシャフトとベアリングカラーは新品を用意しておきました。
ウレアグリスをたっぷり塗っておきます。
スイングアームを取り付けていきます。
ピボットシャフトがエンジンブロック部を通るときに若干ひっかかりがあります。
若干だったのでそのまま組んでしまいましたが、次回外すときはエンジンマウントボルトを緩めるのも有効かもしれません。
無事取り付けが終わりました。
いやはや、ピボットシャフトの固着にはとにかく苦労させられました。
本当に抜けてよかったです。冗談抜きで、最悪はスイングアーム切断という悲劇が待っています。
長期放置のバイクにはたまにあるみたいですね、興味があったらググって見てください。
今回新品のシャフトにしたのと、道具と手順が確立したので、次回は大丈夫だと思います。
固着に苦労されている方はご参考に、固着していないまたは固着しているか分からない方は、一度外してみましょう。
特に新車を買ったばかりの方、今ならすんなり外れます。そしてグリスをたっぷり塗って組み付け、将来固着で困らないようにしましょう。